スーパー 13Cr SMSS 13Cr ケーシングとチューブ

H₂S/CO₂-油-水環境におけるSMSS 13CrおよびDSS 22Cr

スーパーマルテンサイト系ステンレス鋼の腐食挙動 (SMSS)13Cr および二相ステンレス鋼 (DSS) 22Cr の H₂S/CO₂-油-水環境における挙動は、特にこれらの材料が過酷な条件にさらされることが多い石油・ガス業界では大きな関心を集めています。これらの条件下での各材料の挙動の概要は次のとおりです。

1. スーパーマルテンサイト系ステンレス鋼(SMSS)13Cr:

  • 構成: SMSS 13Cr には通常、約 12 ~ 14% のクロムが含まれており、少量のニッケルとモリブデンも含まれています。クロム含有量が多いため耐腐食性に優れ、マルテンサイト構造により高い強度が得られます。
  • 腐食挙動:
    • CO₂腐食: SMSS 13Cr は、主に保護酸化クロム層の形成により、CO₂ 腐食に対して中程度の耐性を示します。ただし、CO₂ が存在すると、孔食や隙間腐食などの局部腐食が発生するリスクがあります。
    • H₂S腐食: H₂S が存在すると、硫化物応力割れ (SSC) と水素脆化のリスクが高まります。SMSS 13Cr はある程度の耐性がありますが、特に高温高圧下ではこれらの腐食形態に対して耐性がありません。
    • 油水環境: 油が存在すると、保護バリアが機能し、金属表面が腐食剤にさらされるのを軽減できる場合があります。ただし、水、特に塩水は非常に腐食性が高い場合があります。油相と水相のバランスは、全体的な腐食速度に大きな影響を与える可能性があります。
  • よくある問題:
    • 硫化物応力割れ(SSC): マルテンサイト構造は強固ですが、H₂S が存在すると SSC の影響を受けやすくなります。
    • 孔食および隙間腐食: これらは、特に塩化物や CO₂ が存在する環境では重大な懸念事項となります。

2. 二相ステンレス鋼(DSS)22Cr:

  • 構成: DSS 22Cr には、約 22% のクロム、約 5% のニッケル、3% のモリブデン、およびバランスのとれたオーステナイト-フェライト微細構造が含まれています。これにより、DSS は優れた耐腐食性と高い強度を備えています。
  • 腐食挙動:
    • CO₂腐食: DSS 22Cr は、SMSS 13Cr に比べて CO₂ 腐食に対する耐性が優れています。クロム含有量が高く、モリブデンが含まれているため、腐食に耐える安定した保護酸化層が形成されます。
    • H₂S腐食: DSS 22Cr は、SSC や水素脆化などの H₂S 誘発腐食に対して高い耐性があります。バランスのとれた微細構造と合金組成により、これらのリスクを軽減できます。
    • 油水環境: DSS 22Cr は、油水混合環境で優れた性能を発揮し、一般的な腐食と局部的な腐食の両方に耐えます。油が存在すると保護膜が形成されて耐腐食性が向上しますが、DSS 22Cr は本来耐腐食性を備えているため、この点はそれほど重要ではありません。
  • よくある問題:
    • 応力腐食割れ(SCC): DSS 22Cr は SMSS 13Cr よりも耐性が優れていますが、高温での高塩化物濃度など、特定の条件下では SCC の影響を受けやすくなります。
    • 局所腐食: DSS 22Cr は一般に孔食や隙間腐食に対して非常に耐性がありますが、極端な条件下では、依然としてこれらが発生する可能性があります。

比較概要:

  • 耐腐食性: DSS 22Cr は、SMSS 13Cr に比べて、特に H₂S と CO₂ の両方が存在する環境において、一般に優れた耐腐食性を発揮します。
  • 強さと強靭さ: SMSS 13Cr は強度が高くなりますが、SSC や孔食などの腐食の問題の影響を受けやすくなります。
  • アプリケーションの適合性: DSS 22Cr は、H₂S や CO₂ レベルが高いなど、腐食リスクが高い環境で好まれることが多い一方、SMSS 13Cr は、腐食リスクが中程度でより高い強度が求められる用途に選択されることがあります。

結論:

H₂S/CO₂-油-水環境での使用にSMSS 13CrとDSS 22Crのどちらかを選択する場合、特により過酷な環境では、腐食耐性の点でDSS 22Crの方が一般的に優れています。ただし、最終的な決定では、温度、圧力、H₂SとCO₂の相対濃度などの特定の条件を考慮する必要があります。